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山内マリコさんの小説作品を読むのは初めて。
山内マリコさんは、富山市出身の若手作家。アタシはこの人を講談師神田伯山先生との対談動画で知り、とてもお着物が似合う美人なので、なんとなく気にかけていました。
寂れゆく地方都市の商店街を、よそ者、若者、バカ者が、元気な街に復活再生させてゆくというストーリー。市役所の広報部署につとめるアラサー女子の姉タカコと、元ギャルでシングルマザー実家出戻りのショー子が軸になって、家族、商店街関係者、大学教員、大学生、地元住民を巻き込みながらドラマは展開していきます。
アタシも、学生とともに加茂市や燕市で、地域振興の活動に取り組んでいるので共感をもって面白く読めました。
タカコの実家は商店街にある老舗の書店。アマゾンとイーオンに浸食され、他の店と同様、客足は遠のく一方だ。かつてにぎわったこの商店街は、いまやシャッター街と化した。そんな瀕死の商店街に、10代で家を出たタカコの妹、ショーコが突然帰ってきた。ショーコは、実家で出産し、子育てを商店街でスタートする。
ショーコは、東京でカリスマ店員として働いていた経験を活かし、商店街再興に情熱をかたむける。商店街内託児所の企画、商店街をあげてのファッションショー、個人商店への大学生ステイ受け入れや、マンスリーショップの運営。商店街で生まれたショーコの娘、街子も商店街の人たちに可愛がられて、すくすく育っていく。
山内さんは、この作品の為に地元、富山の商店街を徹底取材したそうである。いま日本全国の地方商店街が直面している問題が、リアルに描かれている。
タカコにショー子、そして、地元国立大学の都市環境デザインを学ぶゼミを担当、商店街の振興をテーマにかかげ、学生とともに研究活動を続けるうちに、商店街にずぶずぶとのめりこんでいく原まゆみ。物語の展開を担うキイパーソンはみな女性だ。
商店主の寄り合いである振興組合は代々の土地と店を守る戸主が実権をにぎる男社会、身代さえ潰さなければいいというアタマなので、外から波風を立てられるのをひどく嫌悪する。商店街の閉塞性、保守性は、高度経済成長の甘い汁を吸いつくしたジジィどもの、先細る未来へのあきらめに絶望の根がある。
頼みになるはずの市役所の中心市街地活性化担当者は、タカコにショー子の仕掛けるプロジェクトに冷ややかだ。あるある!
商店街主催のしろうとファッションショーで多くの来場者を集め、大成功させる。ところが、イベントが終わるや、騒音がやかましいと警察に苦情を訴える住民こと、商店主たち。敵は内にあり。商店街ファッションショーで学生をスタッフとして参加させた、大学講師の原まゆみは、気落ちしてうなだれるゼミ学生たちにこう声をかける。
このことも皆しっかりとレポートに書くこと。商店街を盛り上げたいという善意で動いても、地域の人の中には、それを迷惑に思う人もいること。今回、決して一枚岩にはなれなかったことは、すごく大事な問題であること。その上で、商店街がこれからどうあるべきか、各自考えるように、と。
イベントは参加する住民からすれば、にぎやかでこころ華やぐ祭りである。しかし、それを計画し運営するスタッフからすれば、善意悪意の感情渦巻く、切った張ったの修羅場である。大学の講師、原まゆみの「リアルな現実に学べ」というメッセージは、アタシも実感するところである。商店街は市民社会の縮図。苦い経験も、痛い経験も、よい社会勉強になるのだ。あるある!
作品の中で、タカコにショーコの心強い助っ人となる蓮沼という、知的で洗練されたセカンドキャリア男性が、とても魅力的だ。蓮沼は、商店街シェアハウス事業の事務局をみずから買って出た。彼の熟練した交渉術、ひとたらしの技があればこそ、振興組合の協力を取り付けられた。シニア男性は、渋く脇を固められるバイプレイヤーがよく似合う。
イベントでマイクを任せると抜群の仕切りを見せる、地域密着のフリーアナウンサーが活躍したりと、新潟のどこかの商店街と重なり合う。漫画を読んでいるように絵が浮かび、コミカルでライトな感覚でたのしめる商店街小説です。まちづくり「あるある!」の共感満載です。ご一読をおすすめしやす。
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